劇団昴「ヴェニスの商人」観劇して
『シェイクスピア 人生の名言』はシェイクスピア没後400年のメモリアルBOOK。同じくシェイクスピア作品を題材にした劇団昴の舞台を観に行ったので、レポートします!
冒頭で紹介した有名なセリフ「輝かしきもの必ずしも金ならず」は、富豪の娘ポーシャに求婚する際の条件である「金銀鉛の箱の中からひとつを選び、彼女の肖像画を引き当てた者に限る」という場面でのセリフである。この三つの箱からアタリを選ぶというは、日本のおとぎ話『舌切り雀』のつづみの選択における教訓に通ずるものがある。
外見に惑わされて、本質を見失うべからず。
これは、肌の色や瞳の色といった見た目や、血という変えることのできない出自だけで「差別」をする人間への皮肉でもあるような気がする。
そう思うと、「輝かしきもの必ずしも金ならず」というセリフがブーメランのように主人公たちに突き刺さる。
演劇のおもしろさは、観客が10人いれば10通りの解釈があり、10通りの感想を許してくれることである。役者の口から発せられる魂のこもったセリフをどう受け取るか、それは、各々に委ねられているのだ。文字面だけではけっして感じることのできない、行間に秘められた魂の叫びを、芝居では読み取れる。だから、おもしろい。
いつの時代も変わらない、ときに残酷で、ときに美しい人間の世界を、シェイクスピアは400年経てなお、私たちに魅せてくれるのだ。
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